『怒らないよ』

優太は、短く答えた。

「えっ!」

それを聞いて、私は目を丸くして驚いた。

「ど、どうしてせっかく夏休み前から予定していたデートなのに、できないかもしれないんだよ!」

思わず私は、強い口調で訊いた。だけど、瞳に流れる冷たい涙。

『梢の言ってることはわからないけど、デートを断ったぐらいでは怒らないよ』

電話越しから、優太のやさしい声が聞こえた。

「でも、断ったら私、優太を裏切ることになるんだよ。せっかく約束までしたのに………」

私は、泣きながらそう言った。

『そりゃぁ、約束していたデートができなくなるのは辛いけど、梢に大事な用事がその日に急に入って、そのせいでデートができなくなったて言うんだったら、俺は怒らないよ』

電話越しから伝わる、彼のやわらかな口調が私の耳に聞こえる。それを聞くと、また泣きたくなる。