『泣いてるのか、梢』

私が泣いてることに気がついたのか、優太が心配そうに訊いた。

「もし、デートできないと言ったら、優太は怒る?」

私は優太の質問を無視して、反対に彼に訊いた。

『はぁ、なに言ってんの?梢。俺たち昨日、デートしたじゃん』

優太は、あたり前のことを電話の向こうから言った。

ーーーーーー昨日、彼とデートしなかったら、私は優太に〝彼女〟と言ってもらえないんだよね。

そう思うと、私はよけいに涙があふれ出した。

「昨日のデートができないというより、デートを断ったら優太は怒る?」

『ますます意味がわからないよ、梢』

電話越しから、優太は低い声で私に訊ねた。

「どうなの、優太?」

私は、冷たく訊いた。だけど、声は震えていた。

大阪の実家に帰って、母親に会う人生を選択したら、私は彼とデートできない。そうすると、彼から私は〝彼女〟なんて言ってもらえないだろう。