「今日一日、梢と一緒にいられて楽しかったよ」

目を細くして笑う、優太。

「うん、私も」

私は、ニコッと笑った。

「ほんとうはさぁ、詩織からデートに誘われてたんだぁ」

「えっ!」

優太の発した言葉を聞いて、私の心臓がドクンとなった。

「今日言いたいことがあるから、私とデートしてくれって」

優太は詩織のことを思い出しながら、淡々と私に説明する。

詩織にうそをついてることがバレると思って、私の額から嫌な汗がダラダラと流れ出した。

「そ、それでなんて言ったの?」

私は、焦った様子で彼に訊いた。

「え、べつになにも言ってないよ。今日は会えないから、また違う日にしてくれって言ったんだ」

優太は、淡々とした口調であったことを私に話す。

「私の名前、出してないよね?」

私は、不安そうに訊いた。

「出してないよ」

優太は、はっきりと言った。

「そう、よかった」

それを聞いて私は、胸をなでおろした。

「詩織より、梢が好きなんだ。だから、俺は梢と一緒にいたいんだ」

そう言って優太は、私の肩にポンと右手を置いてやさしく笑った。

「優太」

私は一歩近づいて、甘えるように彼の胸に顔をうめた。

また私は詩織から好きな人をうばった結果になったけれど、前の人生よりも幸せだった。