「数年前に父親が肺がんで亡くなってからその二年後、母親が同じ職場の上司の人と結婚したんだ」

窓から見える、月を見上げながら優太は切ない声でつぶやいた。

開いてる窓から、ミーンミーンとせみの鳴き声が聞こえる。

「そう………なんだ」

私は、かすれた声でつぶやいた。

優太に悪い質問をしたと思って、私の心が痛くなった。

「パートだから金銭的には助かったから母親の結婚には反対しなかったけど、新しい父親との間に子供が産まれたんだ」

優太は私の方に振り向いて、悲しそうな口調で言った。

開いてる窓から夜風が吹き抜け、優太の黒い髪の毛をなびかせた。

「そうなんだ」

彼の話を聞いたが、私の口からはたいした言葉も出なかった。

「新しい子供が産まれたのと同時に、僕の居場所はなくなったんだ」

うっすらと瞳に涙を浮かべ、優太は悲しそうに私に言った。

優太の家庭環境を知って、私の心がさらに痛くなった。それと同時に、優太が家に帰りたくない理由がわかって辛い。