「梢、このまま時間が止まってくれたらいいのになぁ。そしたら俺はきらいな実家にも帰らなくてもいいし、好きな梢とずっとこうしていられるから」

私の心の声が聞こえたのか、彼も同じ気持ちだったことに切なくなった。それと同時に、優太が実家を嫌がっていることに気になった私は、「どうして、そんなに帰りたくないの?」と、疑問を投げかけた。

「俺の居場所がないから」

優太は、そっけなくそう言った。

「え!」

それを聞いた私は、驚いた顔を浮かべた。

「どういうこと?」

私は、心配そうな表情で彼に訊いた。

「実は今一緒に住んでるお父さん、俺のほんとうの父親じゃないんだ」

沈んだ声で言った優太の瞳に、哀しい色が浮かび上がった。

優太は抱きしめていた私の体を離して、開いてる窓の外の景色に目を向けた。彼の体温を感じなくなると、急に私の体温が寒くなったような気がした。