「でも、家に帰ったら自由なんでしょ?」

「ま、まぁね」

私は、苦笑しながら答えた。

そのとき一瞬、私の脳裏に病院で入院している母親の姿が浮かび上がった。

「俺は、京都で両親と実家暮らしなんだ。家に帰りたくないよ」

そう言って優太は、不平をこぼした。

私は、そんな優太がうらやましかった。家に帰ったら両親がいて、温かい彼の家庭を想像すると、うらやましく感じる。

「一人暮らしだって自由はないし、料理も作らないといけないからしんどいよ」

私はパスタをクルクルとフォークに巻いて、食べながら言った。

ミートソースとからみ合ったパスタが、私の口の中に広がる。

「ふーん。じゃあ梢は、料理が得意なんだ」

「えっ!」

もぐもぐとオムライスを食べている優太が、こもった声でそんなことを言った。それを聞いた私は、驚いた顔を浮かべた。

「梢。今晩、家に行ってもいいか?」

彼が私に視線を向けながら、なにげない口調でそう言った。

思ってもない彼からの突然な質問に私は、「料理はへただからね」と、わけのわからないことを言った。

「そんなのべつにどうでもいいよ。ただ家に帰るよりも、俺は梢と一緒にいたいから。で、行ってもいいの?」

なにげない口調で同じ質問をする、優太。

「いいよ。でも、アパートだから狭いよ」

「そんなの全然、気にしないよ」

かすかに顔を赤くして答えた私を見て、優太は笑って答えてくれた。

私たちは頼んだオムライスとスパゲティを食べた後、店を出た。