「本の話?」

私の言った言葉を聞いた詩織は、首をかしげた。

「うん、そうだよ」

私は、軽い口調でそう答えた。

彼女とこの会話は、一回目にはなかった。

「でも私、あまり本読まないから彼と話が弾まなかった」

笑ってそう言った私だったが、心の中ではまた彼女にうそをついたなぁと思った。

ーーーーーーごめんね、詩織。だって正直に言ったら、私たち、もう会えなくなるんだから。

友人にうそをつくのは辛かったが、それ以上に今のこの幸せがつぶれるのは嫌だった。

「よかったぁ、恋愛の話じゃなくて」

「えっ!」

詩織が、ほっと安堵のため息を口からこぼした。それを見た私は、目私丸くして驚いた。

「いや、実はね。私の好きな人って、〝優太〟なの」

頬を赤らめながら、詩織はうるんだ瞳で私に言った。

「え、そうなの?」

もちろん彼女の好きな人は知っていたが、私は大げさに驚いて見せた。

ーーーーーー知ってるよ、詩織。そんなこと。

私は大げさに驚きのリアクションをしていたが、心は泣いていた。