「おはよう」

そのとき、山田優太が講義室に入ってきた。

「優太………」

私は、ボソッと彼の名前を口にした。

これから彼に告白されることはわかっているせいか、私の鼓動はドキドキと激しい音を立てていた。

「おはよう、優太」

軽く右手を上げてあいさつをする、詩織。

「おはよう、優太」

彼女に続いて、私も詩織のように彼を呼び捨てにしてあいさつをする。

ーーーーーー優太、もう別れるなんて言わないでね。

私は、心の中でそう願った。

「清水。ちょっと、俺と一緒に来てくれないか?」

彼は机にメンズの肩掛けカバンを置きながら、私に声をかけた。

「うん、いいよ」

私はぽっと頬を赤らめながら、首を縦に振った。

「優太、私は?」

詩織が、自分の胸に指をさして訊いた。

「詩織は、待っててくれ。すぐに、戻ってくる」

そう言って優太は、講義室を出た。

私はドキドキしながら、優太の後を突いて歩く。後ろから、「後で優太と、どんな話をしたか教えてね」っていう、詩織の声が私の胸をズキンと痛めた。