『俺、梢を好きになってもよかったのかな?』

「えっ!」

電話越しから、優太のかすれた声が私の耳に聞こえる。

「え、どういうこと?」

『俺が梢を好きになったから、詩織が死んだんじゃ……』

「優太のせいじゃないよ!」

私はさえぎって、はっきりとした口調で否定した。

『でも、もしも詩織が俺のことを好きだったら………』

ーーーーーードキッ!

優太の口から発せられた言葉を聞いて、私の心臓が一瞬でドキッとした。

彼の言ったことは、当たっていた。私も優太のことが好きだったし、詩織も優太のことが好きだった。でも、優太に選ばれなかった詩織は、トラックに轢かれて死んだ。

『梢、ごめんな』

「えっ!」

とつぜん、彼の口から謝罪の言葉が聞こえた。その言葉を聞いて、私は戸惑った。

『詩織が死んだのに、俺たちだけが幸せになることはできない。別れよう、梢』

電話越しから、優太は申し訳なさそうに私に別れを告げた。

「嫌、そんなの嫌!それが原因で別れるなんて、嫌!」

私は、泣きながらそう言った。

今、流している涙には色々な感情が含まれていた。

『むりだよ、梢』

電話越しから、優太の小さな声が聞こえる。

「どうして?私、優太のことが大好きなんだよ」

『俺も、好きだ。大好きだ。でも、ごめんな、清水』

また、苗字で呼ばれて、彼は一方的に電話を切った。

「優太、待ってよ」

私は、彼を呼び止めるように叫んだ。

『………』

しかし、すでに優太の声は私の耳には聞こえなかった。

ーーーーーーどうして、こうなるの?

私は、スマートフォンの液晶画面を見つめながらそう思った。

約束のデートもしてないし、彼とはまだほとんど喋ってない。

「戻りたい」

私は泣きながら、本気でそう思った。

ーーーーー彼に告白される時に。

ーーーーーー詩織が死ぬ前に。

ーーーーーー詩織とケンカする前に。

泣きながらそう思っていると、いつの間にか私首に下げていたピンク色のハートのネックレスに触れていた。その瞬間、ピンク色のネックレスが光り始め、私の体全身を包み込んだ。