「私も、優太のことが好きなの。大好きだったの!」

「えっ!」

詩織は右手に握っていたオレンジ色のかさを離して、泣きながら叫んだ。

オレンジ色のかさが舗装されていた道に落ちて、夜空から降る激しい雨が私と詩織の体全身を濡らす。

ーーーーーーうそでしょ。

好きな人が一緒だったことに、私はただ驚くことしかできない。

「おうえんするとは言ったよ。でも、好きな人が同じだったら、おうえんなんかするわけないでしょ」

涙なのか雨なのか、詩織の瞳から滴が流れていた。

講義が終わってぞろぞろと帰宅する、他の学生たちが私たちの異様な光景に視線を向けている。

「詩織」

思わず私は、友人の名前を口にした。

彼女と出会ってから私は一度もケンカなんかしたことがなく、泣いている姿も見たことがなかった。こんなの初めてだった。

降りしきる雨が、私と詩織の今の気持ちを表しているようだった。

「私から、好きな人をうばうなんてひどいよ!梢なんて、もう友だちでもなんでもないから!」

そう言って詩織は、私の前から逃げるように走り去った。

「ま、まって」

私はすぐに詩織の後を追いかけたが、「来ないで!」と言われて、その場で足を止めた。

「こんなの嫌………」

降りしきる異常に冷たい雨が、今の私をさらに悲しくさせた。