「はぁ〜」

そう思うと、私の口からまたため息が漏れた。

「清水。ちょっと、俺と一緒に来てくれないか?」

「えっ!」

彼は机にメンズの黒い肩掛けカバンを置きながら、低い声で私に声をかけた。それと同時に突然、彼に呼ばれて、私は目を丸くして驚いた。

「いい……けど………」

心臓の鼓動がドキドキとうるさく音を立てる反面、私の発したその声は異常なほど小さかった。

「優太、私は?」

詩織が、自分の胸に指をさして訊いた。

「詩織は、待っててくれ。すぐに、戻って来る」

そう言って優太は、講義室を出た。

私はドキドキしながら、優太の後をついて歩く。背後から、「後で優太とどんな話をしたか教えてね」っていう、詩織の声が後ろから私の耳に届いた。


優太と一緒にいた場所は、大学の食堂だった。広々とした空間に、テーブルとイスがたくさん並べられている。

お昼前の時間だったせいか、学生の数は多く見られた。

「お腹、空いたろ。。なんか、おごるぜ」

「えっ!」

優太がポケットからメンズの長財布を取り出して、なにげない口調で私に言った。

「そんな、いいよ」

私は困った顔をして、胸の前で両手を振ってえんりょうした。

「気にすんなよ。今、俺に付き合ってくれている、お礼だと思ってさ」

優太は名前のとおりやさしい笑み浮かべて、私に白いトレーを渡した。

「ありがとう」

私は頬をかすかに赤らめながら、小さな声で言った。

「いいって」

優太は、笑ってそう言った。