「私、斎藤さんのことが好きなんです。ほんとうはお客さんに恋愛感情を抱くのはダメなんですけど、斎藤さん、優しいから」

潤んだ瞳で私は、自分でも思えないぐらいの嘘をついた。そしてテーブルの上に置いてあったピンク色のスマートフォンを手に取って、私はカメラモードにした。

「斎藤さんの写真、撮ってもいいですか?私、今日でこの仕事辞めるから、最後に私のお客さんの中でも一番好きだった、斎藤さんを撮りたいの」

また、私は嘘をついた。

「べつにいいけど、千春ちゃんと一緒じゃダメなの?」

斎藤さんが、不思議そうな顔で私に訊いた。

「ごめん。それはお店のルール上、できないの」

「あ、そういえば、男性従業員がそんなこと言ってたな」

斎藤さんが、思い出したように言った。

「ごめんね」

てきとうに口だけ謝った私は、三セチぐらいの切り傷がある左腕と、彼全体の写真を撮った。

ーーーーーーこれで、彼が犯人だという証拠を手に入れることができた。

私は、死の運命から生きる運命に変わったことによって、心から大きなよろこびを感じた。