「あの〜。戻れないんですけど、神様………?」

私は、困ったような顔をして神様に訊ねた。

「お前、あの〝結衣〟とかいう女が生きていた時まで戻ろうと願ったか?」

神様は、眉間にしわを寄せて私に訊いた。

「は、はい。願いましたけど………」

「それは、ダメだ。そこまでは、戻れない」

「ど、どうして?」

私は、思わず大きな声を上げた。

「あの女は、お前に嫌な仕事を押しつけさそうとしただろ?」

「あっ!」

神様が冷たく言ったことを耳にして、私は彼女の言葉を頭の中で鮮明に思い出した。

ーーーーーー『千春に、あのお客さんの接客を私の代わりにやってほしいの』

「あそこまで戻ると、悪人まで助けることになってしまう。だから、戻すことはできない」

神様は、冷静な声でそう言った。

「でも、それは仕方がないことで、悪い行いでは………」

「ざんねんだが、あきらめるんだ。いくら私の力を持っていたとしても、悪人を助けられるほど、万能ではない」

「そんな………」

神様にそう言われて、私の瞳に涙が込み上がった。

ーーーーーーあのとき電子掲示板に書かれていたことを信じていたら、私だって斎藤さんの接客を代わりにやってほしいと、誰かに頼んでいたに決まっている。

あの、たった一言で結衣さんが悪人と判断されたら、私はものすごく悲しくなった。