「起きろ、女」

「………」

「起きろ、千春」

誰かが、私の店の名前を口にした。

誰か、わからない。

「梢。俺、お前が好きだ。ずっと前から、好きだった」

「優太、私もずっと好きだった」

優太の声が耳元で聞こえ、私は彼の胸に飛び込んだ。

「おい!胸、当たってるぞ」

だが、すぐに優太とは違う声が聞こえた。

「えっ!」

私は、声のした方に視線を向けた。視線を向けた先に、私の胸の中に五歳ぐらいの男の子の姿が目に映った。

つり上がったなまいきそうな目つきに、まだあどけない顔をしていた。

「きゃぁ!」

胸の中にいる幼い男の子を見て、私は短い悲鳴を上げた。

「だ、だれ………?」

私は、怪訝そうな顔をして訊いた。

「誰とは失礼な女だな。私はこの世界を統べる、〝神様〟だぞ!」

「へぇ?」

五歳ぐらいの男の子の口から中二病みたいな発言が勢いよく出て、私の目が点になった。