「この世界で一番、千春が好きだ。僕以外で君を幸せにできる人はいない。僕のことを〝愛してる〟と言ってくれ」

懇願しながら私にじわじわ迫る、斎藤。

床にお尻をペタンとつけたまま、後ずさりする私。

恐怖のあまり、白くて細い私の腕にゾクリと鳥肌が立った。

ーーーーーー殺される。

逃げ場をなくして絶望的な状況に追い込まれた私は、本気でそう思った。

後ずさりすると同時に、私の背中がワンルームアパートの狭い台所の扉にドスンと当たった。

「えっ!」

私は、涙目で後ろを振り向いた。

きれいにカゴの中に収納されている白い食器や、フックに吊るしてあるフライパン。飲み干した数本の缶ビールと、灰皿の中にあるタバコの吸い殻。そして、白いまな板の上に乗ってある果物ナイフが私の瞳に見えた。