「えっ!」

若い男性の口から、驚きの声が小さく漏れた。

「どうして?時間さえ戻ってくれたら、別れずに済むんだよ。好きな人と、ずっと一緒にいられるんだよ」

後ろから、若い男性の大きな声が聞こえた。

「戻ったところで、時間は進むから別れは絶対にくるよ。どんなに好きでもね」

しんみりとした声で、私はそう言った。

「どんなに好きでも‥‥‥」

「うん、別れはくる。どんなに好きでも」

私は好きだった、優太のことを頭の中で思い出した。

彼のことは好きだったが、結局別れる結果になってしまった。

「そうですよね。出会いがあれば、別れもありますよね」

若い男性は、わざと明るい口調で言った。

やはり私との別れが辛いのか、声はふるえていた。

「でも、もう少し一緒にいたかったなぁ」

若い男性は私と過ごした二年間のことを思い出してるのか、声がかすかにふるえていた。

「しかたがないよ。この仕事も、大学卒業するまでと決めていたから」

「そっか‥‥‥」

若い男性は、苦笑いを浮かべた。

「じゃあ私、もう行くね」

そう言って私は、再び歩き始めた。