「じゃあ、次の仕事がんばってね」

「はい」

そう言って私は、店の外に出た。

空は茜色に染まっており、生暖かい風が私の頬をなでる。

「千春ちゃん、今日で仕事やめるんだってね」

店を出て細い路地を歩いていたら、後ろから若い男性の声が聞こえた。

「うん、やめるよ」

私は、振り返らずそう言った。

「僕たち、もう会えなくなるの?」

若い男性の声は、少しさみしそうだった。

もしかしたら、私のことが好きなのかもしれない。

「わからない」

私は、振り返らず短く言った。

「別れって、こんな突然にやってくるの?」

若い男性は、さみしそうな声で私に訊いた。

「‥‥‥」

その言葉を聞いて、私の脳裏に大好きだった優太の姿が思い浮かんだ。

いつでも会えると思っていたけれど、大好きだった優太とは突然別れがやってきた。