「詩織」

私は、親友の名前を口にした。

「なに、梢?」

そう言いながら、詩織が私の方に視線を向けた。

「私たち、一番の友だちだよ。この先どんな人と出会っても、私の一番の親友は詩織だからね」

口に息を吸い込んで、私は正直に言った。

「私も、梢が一番の親友だよ」

彼女の口からも、私と同じ言葉が返ってきた。

〝親友〟彼女とはケンカもしたけれど、こんなになかよくしゃべれる友だちはもうこの先現れないだろう。

「優太」

「ん!」

私の声を聞いて、優太がこっちに視線を向けた。

このお別れの言葉を彼に伝えるなら、死ぬまで優太に会えないと思うと涙があふれた。

ーーーーーーもう、泣かないと決めたのに。

「優太、そっちで待っててね」

「ああ、ずっと待ってるよ。梢」

いつ会えるかわからない約束を、私たちはいま交わした。

発光する光が強くなり、私の体が薄くなる。

「優太、生きるね。私、一生懸命生きるね」

涙が、ぽろぽろとこぼれる。

「ああ、生きろ。梢、大好きだよ」

優太の最後の言葉を聞いて、私は現実の世界に帰った。