「ごめんな、梢」

優太は、私を抱きしめる力を強めた。

「‥‥‥」

私は、優太の胸に顔を埋めてしくしく泣いた。

「ひとつは、俺のことは忘れないでほしいんだ」

私頭上から、優太のしんみりした声が聞こえた。

「忘れないよ!忘れるわけないよ」

私は優太と過ごした日を思い出して、涙声で言った。

この先生きても、これ以上好きになる人は私の前には現れないだろ。

「二つは、俺がいなくても生きて幸せになってほしいんだ。せっかく、梢が生きる人生になったんだから」

「むりだよ‥‥‥優太がいない人生で、幸せに生きれないよ‥‥‥」

開いた桜色の唇から、私のこもった泣き声が聞こえた。

この先生きても、私は優太のことを思い続ける。優太のことは、忘れることはできない。だから、優太から人生をうばったことを思い出すと、私は幸せに生きることはできない。