「千春ちゃん、だいじょうぶ?」

六時に予約してくれた斎藤さんが、心配そうな表情を浮かべて私に訊いた。

「はい。私は………」

私は複雑そうな表情を浮かべながら、か細い声で答えた。その瞬間、殺害された松本結衣の姿が頭に浮かんだ。

彼女とは一回しか喋ったことがなかったが、なんだか悲しくなった。

「よかった、千春ちゃんの笑顔が見れて」

「えっ!」

それを聞いて私は、目を丸くして驚いた。

「同じ店の女の子が殺害されたから千春ちゃん、きっと泣いてるんだろうなぁーと思って心配したんだ」

トーンを下げてやさしい笑みを浮かべる、斎藤。

「そのためだけに、店にまで来てくれたんですか?」

それを聞いて私は、目を丸くして驚いた。

「ははは、なんかごめんね」

斎藤さんのはにかむ笑顔を見て、私は少しうれしかった。

今までこんなにやさしくしてくれる人がいなかったせいか、そんなことを言われると例えお客様でもうれしく感じる。

ーーーーーーやっぱり、こんなやさしい人が、殺人者なんかじゃない。ネットの書き込みは、絶対にうそだ。

そう思って私は、彼に視線を向けた。