「詩織。死んでから好きな人と結ばれても、意味ないよ」

私は、涙混じりの声でそう言った。

「梢、優太はもう私の彼氏だからね。梢は私たちの分まで生きて、また新しい好きな人見つけない」

そう言って詩織は、優太に視線を移した。私も、優太に視線を移した。

私の好きな優太がうるんだ瞳に映り、彼を見ると心臓の鼓動が速くなるのを感じる。

「梢」

優太が、また私のことを〝梢〟と呼んでくれた。

彼に下の名前で呼んでもらうことがとても久しぶりに感じて、私は優太とデートした日を思い出した。

「〝優太〟って呼んでもいいの?」

私は、不安そうな声で彼に訊いた。

「いいに決まってるだろ。俺も、〝梢〟って呼んでるしな」

そう言って優太は、目を細めた。

「でも、私たちデートしてないよ。だから、彼氏と彼女の関係じゃないよ」

私は優太に言われた言葉を思い出して、彼に言った。

「そんなこと、誰が言ったんだ?」

優太は首をかしげて、とぼけた顔をした。

「優太が言ったんだよ!〝俺たちデートもしてないのに、いつから彼氏と彼女の関係になったんだ?〟って」

私はうるんだ瞳で、優太に言われたことをそのまま伝えた。

あのとき優太に言われた言葉が私の脳裏によみがえり、自然と涙が流れた。