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「千春さん、仕事気をつけてね」

「はい」

私が店に着いたのは、午後五時四十七分だった。

太陽が西にゆっくりと沈み、日没前の空はどこかさびしい薄明に覆われていた。

この店の従業員、白石希。本名、松本結衣が殺害された事件があったせいか、男性スタッフは、さらに私たちに気配りするようになった。その反面、お客さんにより一層きびしい態度を取るようになった。

「千春さん、気をつけてね。まだ、希さんを殺害した犯人見つかっていないようだから」

男性スタッフの新井俊が、心配そうに言った。

「はい」

新井俊はこの店の中で一番私と年齢が近く、話が合う。仕事でもやさしくしてくれるし、ほかの男性従業員と比べたら好きな方だ。

「じゃあ、予約客がもうすぐ来るから。着替えて、個室に向かって」

「はい」

返事をした私は、いつもどおり個室に向かった。そして仕事に着替え、予約してくれた斎藤さんを待つことにした。