「ねぇ、梢」

歩道を歩いていると、となりにいた詩織が突然、トーンの下がった声で話しかけてきた。

「なに?」

そう言って私は、詩織に視線を移した。

「梢はいつから、優太のことが好きだったの?」

「えっ!」

私に視線を移した詩織の瞳に、哀しい色が浮かび上がっていた。いや、憎しみの色にも見えた。

「そ、それは‥‥‥‥」

詩織の強い視線にたえられず、私は彼女と目線をそらしてあいまいに答えた。

「梢は私の恋、〝おうえんする〟って言ったよね」

詩織は私がうそをついたことに怒っているのか、問いつめるように訊いてきた。

「それは‥‥‥」

私は、またあいまいな返事をした。

夜空からやみそうにない激しく降り続ける雨が、傘を叩く。

「私の前ではおうえんするとか言っておきながら、なんで梢が優太に告白してるの?優太のこと好きじゃなかったんでしょ!友だちだから私の恋、おうえんしてくれるんじゃなかったの?」

うるんだ瞳で詩織は、私をにらみつけた。

「それは‥‥‥」

また、私はあいまいな返事をした。さっきから同じ言葉しか言えない。