「答えられないということは、やっぱり清水は俺のこと好きじゃなかったのかよ!」

優太は、悔しそうに下唇を噛みしめた。

「それは違うよ、優太。かんちがいしないで。私は、優太が好きだよ。それだは、信じて!」

私は懇願するような声を口が出して、うるんだ瞳で優太をまっすぐ見つめた。

「うそつき」

そう言って優太は、イスから立ち上がった。

「ま、まって!」

離れていく優太の手を、私はとっさに背後から握りしめた。

優太の温かい体温が、私の手に伝わる。

「私、うそなんかついてないよ。ほんとうに、優太のことが好きだよ。私たち、デートだってしっかりしたんだよ」

「なに言ってんだ?俺たち、デートなんか一度もしてないだろ」

優太の怒った口調を聞いて、私は「えっ!」って驚きの声を小さく漏らした。

「お前、俺とのデート断っただろ!なに勝手にデートしたつもりでいるんだよ!」

振り向いた優太は、私に怒り声を上げた。

優太の瞳には哀しい色が浮かび上がっており、今にも泣き出しそうだった。

「優太‥‥‥」

つぶやいた声とともに、優太の手を握っていた私の力が弱くなった。

私には彼とデートした記憶はしっかりと残っているが、優太にはない。

「それに、俺のことを〝優太〟って軽々しく呼ぶな!いつから、俺たちは彼氏と彼女の関係になったんだよ?」

そう言って優太は、私の手を振り払って去った。

「優太、まってよ!」

精一杯大好きな人の名前を叫んだが、彼は私の前から去っていた。