ーーーーーーそれ以来、結衣とは会うことはなかった。

「まさかね………」

一瞬ものすごい勢いで斎藤さんの姿が頭に浮かび上がったが、私は首をぶるぶると振ってかき消した。

ーーーーーーあんなやさしい人が、殺人者なんかじゃない。ネット掲示板サイトに書かれていることは、すべてデタラメだ。

そう思って私は、スマートフォンを閉じた。

「さっきから二人で、なに話してんの?」

前の席で白いイヤホンを耳につけながら文庫本のを読んでいた、山田優太が私たちに声をかけてきた。

黒縁メガネをかけており、茶色がかかった髪の毛を短く切り揃えている。すらりとしたやや痩せ型の体型で、褐色の肌。目尻が下がったやさしいタレ目に、薄いピンク色の唇。

ーーーーーードクッ。

「優太君………」

彼を見ると、私の心臓の鼓動が激しくなる。

それは大学のときに出会って、共に同じ文学部として一緒の時間を過ごしたのがきっかけだった。大学一回のとき同じ文学部で出会って、そこから私は彼となかよくなり始めた。しかし、日を重ねるごとに友人関係から、私は彼のことを好きになっていた。

ーーーーーー好きだよ、優太。

声に出さない限り、その想いはけして伝わらない。