「ねぇ、優太。私に怒ってる?」

私は、優太に視線を移して不安げな声で訊いた。

「べつに」

彼は、本のページを一枚ペラリとめくって冷たく言った。

よほどその本に夢中なのか、私を見てくれもしない。

「詩織、大学来てないね」

私は、小さな声でそう言った。

「詩織は、午後からの講義」

本を読みながら冷たく言う、優太。

「そ、そうなんだ」

私の開いた薄い桜色の唇から、歯切れの悪い声が漏れた。

私と優太は午前の講義だけで終了し、詩織は午後からの講義だった。だから今日は、詩織と会うことはなかった。

結局私は優太と一日特にしゃべることもなく、午前の講義を終えて家に帰った。