「夕日がきれいだよ、お母さん」

私は立ち上がって、病室の窓から西に傾いている夕日を見つめた。

街全体が美しいオレンジ色の光景に染められており、西に沈む夕日はなんだか切なく感じた。

「お母さんも、見ないの?」

私は、沈む夕日を見つめながら訊いた。

「お母さん、ほんとうにきれいだよ。起きて一緒に見ない?」

私は沈む夕日を見ながら、母親にもう一度同じことを言った。

「‥‥‥」

「お母‥‥‥さん」

母親の返事が返ってこないことに不安になった私は、後ろを振り向いた。

「お母さん。夕日、きれいだよ‥‥‥」

開いた私の桜色の唇から出た声は、かすかに震えていた。

母親が死ぬことは今日だということはわかっていたが、突然、別れると思うと視界がにじむ。