「あの、お花を母にプレゼントしたいので、プレゼント用に仕上げてくれませんか?」

私は、若い女性店員に視線を移して言った。

店内はお花の鮮度を保持するためか、クーラーの冷たい風が吹いていた。

「かしこまりました」

そう言って若い女性店員はショーケースを右手で開けて、「どのお花をお母さまにプレゼントしましょ?」と、笑顔を作って言った。

ひんやりとした冷たい冷気が肌を刺し、私の瞳に色鮮やかな花が映る。ショーケースに入ってあったお花の香りが店内に開放的に広がり、私はうっとりした表情を浮かべた。

「ラベンダーとアジサイとひまわりを、三本ずつください」

私は、その三本の花を指さして答えた。

「ありがとうございます」

若い女性店員は黒いエプロンの前ポケットから枝切りハサミを取り出し、茎や葉を切り落としていく。レジに葉や茎が落ちる。きれいにカットしたら、薄いオレンジ色の紙の上に花を乗せてラッピングする。

「おまたせいたしました」

若い女性店員が、赤いリボンをキュッとオレンジ色の紙に結んで私に笑顔で渡した。

「ありがとうございます」

私は、薄いオレンジ色の紙に包まれた花束を受け取った。

夏の花の香りが、私の鼻腔をくすぐる。

「三千五百円になります」

「はい」

若い女性店員がお花の料金を電卓で計算した金額を、私は会計皿にのせて渡した。

「ありがとうございました」

若い女性店員のお礼を聞いて、私は購入した花束を手に取って店の外に出た。