「でもそれは、私のかんちがいだった。お母さんが仕事のためにお酒を飲んでることなんていまの今まで知らなかった。こんな病気になるまで、私たちのために働いてくれていたなんて‥‥‥」

母親の陰の苦労を想像すると、私の瞳に涙が込み上がる。

「つばさから聞いたの?」

母親が、弱々しい声で私に訊ねた。

「うん」

私は、コクリとうなずいた。

電話で教えてもらった、つばさとの会話が私の脳裏に思い浮かぶ。

「父親が残した借金があったせいで私が仕事をしていることをつばさには教えたけど、梢には言いたくなかったの。ごめんね、梢。今まで、隠していて」

母親は、弱々しい声で謝った。

「どうして言ってくれなかったの?言ってくれたら私、大阪の実家を離れなかったのに‥‥‥」

母親を責めるつもりはなかったが、私の口調が自然と強くなる。