「こずえ‥‥‥」

私が手を握った瞬間、母親がうっすら目を開けた。

「お母さん?」

母親と視線がからみ、口から出た私の声が震えた。

「きて‥‥くれたんだんね」

今にも消え入りそうな母親のなつかしい声が、私の耳に届いた。

ーーーーーーああ、なつかしい。

久しぶりに聞いた母親の声は弱々しく、病におかされていることがわかった。

「美代子さん。すみませんが、母としばらく二人にさせてくれませんか?」

私は、深く頭を下げて頼んだ。

「ああ、いいよ」

そう言うと、祖母は病室から出た。

「姉ちゃん、ゆっくりお母さんとしゃべってやれよ。ずっと、姉ちゃんに会いたがってたんだから」

そう言って翼も、病室から出た。

二人が出たあとの私と母しかいない病室は、やけに静かに感じた。