「姉ちゃん、お見舞いに来てくれたんだね」

私が病室に入ってきたのに気づいたのか、翼はすばやく手招きして呼んだ。

私は早足で、呼ばれた翼の方まで歩いた。

「お母さん」

私は閉めてあった白いカーテンを少し開けて、病室のベッドに目を向けた。癌の影響なのだろうか、私の視界に病的に痩せた母親の姿が見えた。

腕には点滴がつながれており、足のむくみもひどかった。抗がん剤と強いストレスのせいなのか、頬がげっそりこけていた。

「お母‥‥‥さん」

私は、自分の目を疑った。

私が大阪の実家を飛び出したときは、まだ母親は元気だった。だけど、病室のベッドで一秒ごとに命を削られ、弱っていく母親なんて信じられない。