午前十時三十分。私は、京都駅構内にいた。京都駅にはたくさんの人々が歩いており、その中に外国人観光客の姿も多く見られた。

私はスマートフォンの液晶画面に映っている、幼いときの自分と若かりしころの母親に視線を落とした。

このころはまだ母親とケンカはしておらず、仲はよかった。

遠い昔の記憶がよみがえり、うっすら私の瞳に涙があふれた。

私自動販売機で大阪行きの切符を買って、エスカレーターを登った後、駅のホームで電車を待っていた。駅のホームにはたくさんの人がおり、LEDの電光掲示板には電車の発車時刻と到着時間が表示されていた。

「もうすぐねぇ」

私は、LEDの電光掲示板に視線を向けて小さな声で言った。

LEDの電光掲示板に表示されていた大阪行きの到着時刻は、十時四十五分だった。

私は、腕時計に視線を落とした。腕時計の針が指していた時刻は、十時四十三分だった。

「まもなく、大阪行きの電車が到着します」

二分後、電車到着を知らせる、駅員のアナウンスがホームに響いた。