ーーーーーーブルブル!

そのとき、私のスマートフォンがけたたましく鳴り響いた。

私は、スマートフォンの液晶画面に視線を落とした。液晶画面に表示されていたのは、清水翼だった。

「もしもし、翼」

私は液晶画面に表示されていた電話マークを右にずらして、ブルブルと震えていたスマートフォンに出た。

『姉ちゃん、すぐ大阪に帰ってきてくれ!』

ひどく慌ててるのか、翼は取り乱した口調だった。

「どうしたの?」

用件は大体予想はつくが、私はそう訊ねた。

ーーーーーーおそらく、母親のことだろう。

『母親が末期の肝臓がんで、六月ごろから大阪の総合病院で入院してるんだ!』

ーーーーーーやっぱり。

電話越しから聞こえた翼の取り乱した口調を聞いて、私はそう思った。

『死ぬ前にお母さんが、〝姉ちゃんに会いたい〟と言ったんだ。だから早く、お母さんが入院してる大阪の総合病まで来てくれ』

電話越しから聞こえた翼のひどく取り乱した口調で伝えた言葉は、私は聞いたことがあった。

優太とのデートを終えた次の日に、翼が私に電話で伝えた言葉とまったく一緒だった。違うのは、翼の声色だった。

優太とのデートを終えた次の日にかかってきた電話は怒っていたが、今はひどく慌てているような声だった。でもその声が、まだ母親が生きてる証拠。

「わかった」

『待ってるよ、姉ちゃん』

私がそう返事した直後、翼は一方的に電話を切った。

私は慌てて出かける支度をして、アパートを出た。