【好きだよ。でも、急に大事な用事が入ったんだ。ほんとうに、ごめんね】

慣れた手つきで液晶画面に文字を打ち込んだ私は、彼にそう返信した。

ーーーーーーごめんね、優太。約束していたデートできなくて。

私は、心の中で彼に謝った。

私にはデートした記憶はあるが、彼にはない。その思いが、また私を悲しませる。

ーーーーーーブルブル!

数秒後、彼から電話がかかってきた。

持っていたスマートフォンがブルブルと震え、私は慌てて電話に出た。

「もしもし、優太」

『梢か?』

電話越しから聞こえた彼の声は、暗かった。

「優太、ごめんね。デートできなくなって」

私は、心から彼に謝った。そのせいで、自然と声がふるえる。

『俺、夏休み入る前に梢とデートの約束したよな?』

彼の言い方が、冷たく感じる。

「う、うん。でも、大切な用事が急に入ったの。ほんとう、ごめん」

『俺は、梢のすべてが好きなんだ。どんな仕事をしていても、関係ない!でも、俺のことが嫌いなら、〝嫌い〟って正直に言ってほしい』

LINEの文面よりも、彼の言葉は私の心に重くのしかかる。