「ごめんね、優太」

そう思いながら、私は慣れた手つきで液晶画面に文字を打つ。

【ごめん。今日は、用事。また、違う日にして】

短く画面に文字を打ち込んで、私は彼にそう返信した。

開いてる窓からうるさく聞こえる、せみの鳴き声が今の私の気持ちを表しているようだった。

ーーーーーーブルブル!

私が返信した文を読んだのか、彼からすぐにLINEの返信が送られてきた。

【なんで?約束したじゃん。梢は、ほんとうに俺のことが好きなの?】

彼から送られてきたLINEの文面に、私は目を落として読んだ。

「優太………」

つぶやいた私の声は、かすかに震えた。

文字を読んだだけでも伝わる、彼の悲しい気持ち。私の胸が苦しくなり、瞳が水のように揺れた。

開いてる窓からうるさく聞こえる、せみの鳴き声が今の彼の気持ちを表しているようだった。