「帰るのか?」

神様が、抑揚のない声で私に訊ねた。

「うん」

私は、ハートのペンダントに触れながら答えた。

ハートのペンダントが、キラリと光り始める。

「わかってると思うけど、タイムリープできる数には限りがあるんだ」

しつこく忠告する神様に、私は「はいはい」と、あいまいに返事をした。

光がさらに強くなり、私の体を包み始める。

「人の気持ちばかり考えてやさしくしてると、自分が不幸になるぞ。人を切り捨てるのも、やさしさのひとつだぞ!」

神様は、私がタイムリープするのを最後まで否定的だった。まるで母親に会う選択をせず、優太とデートをする人生を勧めていた。

「神様は、人と関わったことがないからそんな冷たいことが言えるんだよ。人と関わったら、人の気持ちに答えたいというやさしい感情が芽生えるよ」

私は、やさしい口調で神様の意見を否定した。それを言い終わった瞬間、光が私の体全身を包み込んだ。光の中で、私が経験した過去の人生が映像で逆再生に映し出される。

『私たちのためだったの………?』

『姉ちゃんはお酒ばかり飲んでるお母さんを嫌がっていたけれど、あれはスナックの仕事をしていたからしかたなく飲んでいたんだぞ!』

『え、死んだ………!』

『お母さんが昨日、末期の肝臓がんで死んだ』

『………死んだ』

『今日一日、梢と一緒にいられて楽しかったよ』

『梢。俺は、いつまで好きなお前とこうしていられるのかな?』

光の中にある時計がグルグルと壊れたように反時計回りに勢いよく回る。そして、光は消えた。