「それは、優しさではない。ただ、自分が不幸な選択をしてるだけだ」

私に指差して、神様は諭すように言った。

「それは、違うよ」

私はぶるぶると首を振って、きっぱりとした口調で神様に反論した。

「なにが違うんだ?」

神様が不満そうに訊いてきたので、私は「母親とケンカしたまま、別れてしまったことが不幸なんだよ」と言った。

「どうせ会っても、母親は死ぬんだぞ」

冷たい声で、神様は現実的なことを口にした。

「そうだね」

それについて、私は反論できなかった。

たしかに私が戻ったところで、母親が病気で死ぬことには変わりはなかった。

「だったら、なんで戻るんだよ!戻ったところで、会えるのは病気で弱ってる母親の姿だぞ!」

「だから、戻るんだよ」

「へぇ?」

私のきっぱりとした口調を聞いて、神様はすっとんきょうな声を上げた。