全て
仕組まれていたのかもしれない。

駅からの帰り道、酒臭い中年男に絡まれて、助けてくれたのが瑛太だった。
彼の低い声はよく通って迫力があり、中年男を簡単に追い払い結衣を助けてくれた。

『ケガしてない?怖かったろ』
怯えていた結衣に優しく声をかけてくれた瑛太を街灯の下で見た時、その端正な顔立ちに驚き声も出せなかった。
小さな声でやっとお礼を言うと『まだ近くにいるかもしれないから、コーヒーでもどう?それから送るよ』そう言われて、半ば押し切られる態度で近くのスタバに連れて行かれて結衣と瑛太は話を弾ませた。

どうしてそこで振り切って帰らなかったのか。
何度も何度も結衣は自分を責めたけど、地方から出てきて10年目の春の話で、友達もそこそこいるけど壁を作ってしまう自分が悪いのか、親友と呼べるほどの友達もなく、恋人と別れたばかりの彼女には、春の陽気が少し寂しかったのかもしれない。