◆
あたしが予備校から帰宅する時間帯は、だいたいいつも、自宅の最寄り駅で下車する人の数が少ない。
帰宅ラッシュには遅すぎるし、お酒を飲んで帰ってくる会社員達が帰宅するには早すぎる。ちょっと中途半端な時間帯なのだ。
駅から離れるにつれて人気がなくなっていく道を、自宅のある住宅街に向かって早足で歩く。
早く家にたどり着きたくて、無心に歩いていると、いつも通り抜けする公園が見えてきた。
公園の入り口のそばに街灯があるのだが、それとは別に、オレンジ色の小さな光が宙に浮かんでいて、暗闇の中で点滅している。
歩きながらジッと目を凝らすと、オレンジの光のそばに、ぼんやりとした人影が見えた。
誰かが、公園の入り口に立っている。
近付くにつれて、宙に浮かぶオレンジの光から上へと昇る、うっすらとした細い灰色の煙も見えてきた。
どうやら、誰かがそこで煙草を吸っているらしい。