「そんなはずないよ」

否定の言葉を口にした声を弱々しく、我ながら説得力がなかった。

『たぶん学年一かな? お前の顔、俺の好みだったから』

いつだったか、涼太に言われた言葉が耳に蘇る。あたしだって、その言葉の真意を全く理解していなかったわけじゃない。

それでも鈍感なフリを続けているのは、亜未の気持ちを知っているからだ。

「紗幸希だってほんとは、涼太のこと少しは気になってるでしょ?」
「ないよ。涼太なんて絶対ない。なんで、亜未があいつのことがそんなに好きなのか、全然わからないもん」

今度聞かれたのは、自分の気持ちについてだから。はっきりと、強い態度で否定する。

だけど萌菜は、テーブルに肘をついてあたしを見つめながら、くすっと笑った。

「嘘つきだなぁ」
「嘘じゃないよ」

すぐに否定したけれど、萌菜は口元にうっすらと浮かべた笑みを崩さない。