あたしが黙っていると、萌菜が悪戯っぽく唇の端を引き上げた。

「紗幸希はどうなの? そんなこと突然聞いてくるってことは、もしかして涼太と何かあった?」
「へ? 何で涼太!?」

まさかそんなことを訊ねられるとは思わず、ぽかんとした顔で萌菜を見つめ返す。

「何、その反応? なんだ、期待はずれ。涼太と何かあったからそういうこと聞いてきたってわけじゃないんだ?」

呆然とするあたしを見て、萌菜が面白くなさそうに唇を尖らせた。

「期待はずれって……あたしと涼太が何かあるとか、そんなわけないでしょ」

いつも必要以上に馴れ馴れしくて人懐っこい涼太の笑顔を思い出しながら、頭を左右に大きく振って否定する。

「紗幸希がそうやって否定するのは、亜未が涼太を好きだから? どう考えても、涼太って紗幸希のこと好きじゃん」

萌菜に指摘されて、わかりやすく頬が火照った。

冷房のよく効いた室内にいるのに、団扇で思いきりパタパタと扇ぎたくなるような、そんな衝動に駆られてしまう。