「萌菜って、今彼氏いるの?」
あたしの質問を聞いた萌菜が、ちょっと驚いた様子でマスカラののった長い睫毛をパチパチと瞬かせた。
「どうしたの? 紗幸希からそういうこと聞いてくるなんて珍しいね」
「ごめん。なんか、つい……」
「何で謝るの? 別にいいじゃん。勉強ばっかしてたら疲れるから、たまにはそういう話もしないとねー」
うつむいて口ごもるあたしを見て、萌菜がふふっと小さく笑った。
「残念ながら、あたしは彼氏いないよ。だけどね、好きな人はいる。だから、それを原動力に勉強も頑張ってんの」
「好きな人?」
それって、もしかして……
あたしが思い浮かべた顔は、ひとつだけだった。
だけど嬉しそうに微笑む萌菜に、それ以上踏み込んだことを訊ねられない。