「そういえばさ、紗幸希と亜未と涼太と上原くん。今年も同じクラスだったよね」
しばらくの沈黙ののち、ようやく話題を思いついたらしい萌菜が、ドーナツを皿に置いて顔をあげる。
「うん」
「亜未って、今も涼太のこと好きなんでしょ?」
「たぶんね」
あたしが頷くと、萌菜は「ふぅん」と相槌を打って、それからまた口を閉ざした。
去年同じクラスで仲が良かったから、萌菜も亜未の涼太への気持ちを知っている。
未だ継続中の亜未の気持ちをあたしに確認してきた萌菜は、ただ事務的に質問してきただけのようで。そのこと自体には、さほど興味がなさそうだ。
また、黙ってドーナツを食べ始めた萌菜をじっと見つめると、さっき職員室で見た光景がふとあたしの脳裏を掠めた。
先生と生徒にしては、親しげに思えた萌菜と冴島先生。去年、付き合っているという噂が流れていたふたりだけど、真相はどうなんだろう。
あたしは普段、決して自分から人のことに口を突っ込むタイプじゃない。
それなのに、つい気になって、訊ねてしまった。