駅前のドーナツ屋に着くと、あたし達はお互いにアイスカフェオレとドーナツを一つずつ頼んで、二人用のテーブル席に向かい合って座った。
「紗幸希、受験勉強頑張ってるみたいだね」
萌菜がそう言いながら、アイスカフェオレのストローを口に運ぶ。
「萌菜だって頑張ってるじゃん。さっきだって、冴島先生に質問してたんでしょ? 去年までは亜未と一緒にネイルとかメイクとか、あとはドラマの話で盛り上がって勉強なんて興味なさそうだったのに」
あたしがそう言うと、萌菜がカフェオレのカップを置きながら苦笑いした。
「そうだよね。でもあたし、こう見えて結構真面目なの。浪人したくないしさ」
萌菜が片肘をついた手で、カフェオレのカップに挿さったストローをくるくる回す。
「うん、そうだね」
受験についての世間話をしばらく続けたあたし達は、それから少し無言になった。
同じクラスで毎日顔を合わせていたときは、話題なんて尽きないほどにあったのに。ひさしぶりにこうして向かい合うと、お互いに次に繋ぐ言葉が見つからない。
その妙な間を持たせるために、あたし達はお互いに、ドーナツを無心で食べた。