亜未のやつ、ミーハーなんだから。
あたしは顔を赤くして喜んでいる亜未の横顔を冷めた目でちら見しただけで、冴島大輔の言葉には乗らなかった。
「気軽に連絡してよ」って……。お前は女子高生と遊ぶために教育実習に来たのかよ。
心の中で悪態をつく。
冴島大輔は確かに見た目がいい。女子達が騒ぐのもわかる。
だけど、そのとき彼があたしに与えた印象は最悪だった。
冴島大輔を取り囲んできゃーきゃー騒いでいる萌菜と亜未から離れると、試食の準備の続きに取り掛かる。
実習室の後ろの棚に班の人数分のフォークを取りに行っていると、いつの間に近付いてきていたのか、木瀬涼太が隣に立っていた。
「大ちゃん、かっこいいよなぁ。サユもやっぱあぁいうタイプが好み?」
あたしの隣でフォークを集めながら、涼太が訊ねてくる。
「別に。あたし、チャラい男は嫌いだから」
素っ気なく答えながら、涼太のほとんど金に近い茶色の頭と少し長めの髪から覗いている左耳にひとつ開いたピアスをちらっと見やる。
「そっか。よかった」
冴島大輔をちらっと振り返りながら安堵したように笑う涼太には、あたしの言葉がちゃんと届いていたのだろうか。