夏休み中なこともあり、職員室はがらんとしている。
だけど、入り口からは死角になっている窓際の奥の席には一人だけ男の先生が座っていて、その傍に女子生徒が一人立っていた。
よく見るとそれは里見 萌菜で、彼女と話しているのは冴島先生だった。
萌菜と話しながら楽しげに笑っている冴島先生の表情に、なぜか少しドキリとする。
ハタから覗き見た二人は先生と生徒というよりは、仲の良い兄妹ような────、否、年の離れた恋人同士みたいな雰囲気で……
あたしは、見てはいけないものを見てしまったような気がした。
心臓がドキドキと鳴って、普通に呼吸をすることすら躊躇われる。
鞄を握り締めていた手に、変な汗が滲み出てきた。
できるだけ物音を立てないように静かに立ち去ろう。そう思ってゆっくりと後ずさりかけたとき、あたしの肩がとんっと何かにぶつかった。