1時間ほど集中して問題を解いて自己採点話していると、解答を読むだけでは理解できない問題がいくつか出てきた。

時計を見ると、予備校に行くまでにはまだ随分と時間がある。

職員室に担任の柴崎先生がいれば、質問できるかもしれない。

荷物をまとめて立ち上がると、あたしは職員室へと向かうことにした。

夏期講習が終って人気のなくなった廊下は、閑散としていてとても静かだ。

床を踏みしめるとき、上履きの底が擦れて鳴るキュッキュッという音が、やけに響いて耳につく。

締め切っている窓の外からは、蝉の声が小さく漏れ聞こえていた。

誰ともすれ違うことなく職員室までたどり着いたあたしは、そっとドアを開いた。

冷房がよく効いた室内から、冷気が外へと漏れ出す。

頬に触れた冷たい空気に少し目を細めながら職員室の中へと一歩足を踏み入れると、そこはやけにシンとしていて、通常とはなんだか雰囲気が違っていた。

「誰もいないのかな……」

「えぇ? そうなんですか?」

小さく呟いたとき、不意に、職員室の奥の方から女子生徒の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。