夏休み。亜未が勝手に申し込んだ1時間の数学の夏期講習に真面目に出席したあと、鞄の中から英語の問題集を取り出して机の上に広げた。

「あれ、帰らないの?」

帰る用意を終えた亜未が、夏期講習が終わっても席を立とうとしないあたしにふらふらと近づいてくる。

「うん、取ってる予備校の授業までまだ時間あるし。ついでに学校で勉強してから帰る」

あたしがそう言うと、亜未の後ろからやってきた涼太と上原くんが興味深そうにあたしの手元を覗き込んできた。

「サユ、まだ勉強すんの? 熱心だな、お前」

涼太が机の上に置いていた問題集を拾い上げて、つまらなそうな顔で、パラパラとページを捲る。

「返して。あたしはあんたと違って忙しいの」

立ち上がって涼太の手から問題集を奪い取ると、上原くんがくすっと声をたてて笑った。