廊下で話している彼らをぼんやりと見つめていると、あたしの見ているものに気がついた亜未がぼそりと呟いた。

「あ、萌菜と大ちゃん」
「うん」

何となしに返事をすると、さっきまで涼太とのおしゃべりに盛り上がっていた亜未が今度はそっとあたしの耳元に顔を寄せてきた。

「高2のとき、萌菜が大ちゃんと付き合ってるって噂あったじゃん。あれってほんとだったのかな? 今も継続中だったり……?」

あたしの耳元の顔を寄せた亜未が、ひそひそとそんなことを囁く。

「さぁ。噂じゃない? 萌菜、何も言ってなかったでしょ」

亜未の言葉にさほど興味なさそうな返事をする。

けれど、そう言っておきながら、あたしの視線はいつまでも廊下で話す冴島先生と萌菜に注がれたままだった。