もう、勝手にして……
だんだんどうでもよくなってきたあたしは、涼太と楽しそうに話している亜未の横顔を見つめながら深いため息をつく。
机に肘をついたとき、ふと冴島先生が廊下を歩きすぎていくのが見えた。
「冴島先生!」
そのあとを、教科書を手にした女子生徒が追いかけてくる。
冴島先生が立ち止まり、女子生徒が追いつく。
教科書を広げて彼に何か質問をしているらしいその女子は、里見 萌菜だった。
去年、教育実習生としてやって来た冴島先生を見る萌菜の目は、男の人を見る一人の女の子のそれだった。
だけど、今廊下で話している冴島先生と萌菜は普通に先生と生徒に見える。
1年以上経って、萌菜のほとぼりが冷めたのだろうか。
2年生のときはあたしも萌菜とそれなりに仲がよかったのに。クラスが離れた今、なんとなく萌菜と言葉を交わす機会が減ってしまった。